白の戦い

「マヨルに死を! マヨルアに絶望を!」
「マヨルに死を! マヨルアに絶望を!」
澄み切った青空にネイザン達の声がこだまする。
バリウムウンコを整然と並べたかのような、とがった白の帽子と白のローブの集団は、一糸乱れぬ呪いの祈祷に全てを集中する。
長方形になる白ウンコの端に幾人かのひときわ大きなとがり方をした白のリーダーがおり、
「真の白は我らに!」
と叫べば、
「真の白は我らに!」
他の白全部が復唱する。
「ネイザンは追求し、救済する!」
「ネイザンは追求し、救済する!」
ここは純白のネイザンの総本部、堅なる白い城砦、ネイザン城の中庭である。
「ウーオ=ネイザン!」
「ウーオ=ネイザン!」
☆☆☆☆☆☆
白い城は小高い丘にあり、密かに潜入するのはまず無理だ。だからだろうか、正面から堂々と突撃してきた。
およそ100人の兵だ。突撃するこの兵達も、ネイザン城の中と同じくらい白い。そして中と比べるとやや固いバリウムウンコだった。
100人の白いマヨルア、彼らは当然丘のふもとに集まった時点でネイザンの見張りに見つかっていた。
ネイザン城は100人を数倍うわまわる兵力で、完全防備、対してマヨルアは100人、ネイザンは簡単にマヨルアを撃退できると考えたが、当然相手には何か策があるものだと警戒した。
マヨルア軍は全員歩兵だった。フードの付いた白いローブと白い槍と弓で武装していた。全員が。
突撃するマヨルア軍に向かって、ネイザンの白い矢が次々と発射されだした。マヨルアのものどもは先頭の方から、どんどん矢にブッ刺されて倒れていった。
マヨルア軍からの矢はほとんど城壁に阻まれて効果を上げられなかった。
マヨルア軍は半分くらい死んだ。
しかし突撃は止まらなかった。残り半分ほどが砦の城壁まで到達する。
マヨルアは槌で城門を打ち破ろうと突撃した。同時に、城壁にそって他の入り口を求めるようにも動いた。
突撃するものたちは、しかし城門をこえることはできなかった。上から矢どころではなく燃える油などを色々と投げつけられ、皆死んでしまった。
マヨルアに敗走するものはいない。皆が最後まで突撃を続け、矢や火炎瓶で死んだ。
全滅だ。まもなく城壁の外に動くものはいなくなった。
やわらかいほうのバリウムウンコ、ネイザン軍の勝利だった。
砦の中には結局何も攻撃を受けていない。いとも簡単すぎた。完全勝利だと誰もすぐには確信できなかったが、城の警戒を7日続けてもそれ以上何も攻めてこなかった。
ネイザンのリーダーたちは勝利宣言を上げた。
勝利の祝宴、戦利品の強奪、敵兵の葬送などの準備をととのえようかと、ともかく人々は祝いの気分に満ちた。
城門を開け、死屍累々の丘に最初にネイザンの兵士や神父が出て行った。
城門から最初に出たなかで先頭にいたネイザンの神父が、マヨルア兵の折り重なって倒れたところに、鎮魂と救済の祈りをささげようとした。
白いローブと白い死体に手を触れたとき、そこにいたネイザンの人々の誰もが予期しないことが起こった。
神父の目の前の死体から突如白い雲が噴出したのだ。
神父は最後の言葉を残すまもなく溶けた。
死体が爆発した。爆発は大きく、50歩は離れたところにある別の死体も巻き込んだ。爆発に巻き込まれた死体はまた同じように爆発した。
爆発に巻き込まれた人々はみな白い粘体になった。どろどろと。
爆発は城壁を囲むように死んでいた死体をなめるように起こり、ネイザン城は完全に白い毒の爆風に巻き込まれた。
城から脱出しようとした者はやはり巻き込まれ、閉じこもって空気を遮断しようとして隠れた者達もやがて巻き込まれた。
ネイザン城は白い粘体と白い毒霧に完全に満たされた。
☆☆☆☆☆☆
「それが<マヨルの白プリン>だって? そういや確かにこの残雪はこの城跡の山のほかのとこに比べてぐよぐよしてるし、なんか酸っぱいようなにおいがするけど……」
「だから普通の雪じゃないんだって。そんでもってマヨルのそれ以外の魔術の一部も今でもわずかに残ってる。コレに入った粉とか」
「そのパックが?」
「そういった魔術はね、今のこの宇宙の化学や物理法則では完全に否定されている。ある時点で、角笛が吹かれて、この宇宙の全ての法則が少し変わって、魔術は滅びちゃった。ありえないものになった。でもね、魔術の“なごり”ってのは今現在の化学法則の中にあるといえばあるわけ。この粉とかね」
「なるほど。その粉を……水を加えて、そうやって混ぜると……おお、色が白く変わって……」
「こうやってトッピングをつけて……ぱく、ウマイ!」
テーレッテレー