カナ

ヌルデブリとは宇宙空間を漂う小さな泡のようなものである。
ただしこの泡は空気ではなくアンチマターまたはヌルとよばれる虚無のフィールドを中心に含んだ球体である。これは宇宙空間にたまに出現し、接触してしまうと接触した部分は削り取られてしまう。削り取られるって具体的にどういうことだよと思うかもしれないが、削り取られるというのが一番わかりやすい表現なのだからしかたがない。
ヌルデブリ探知デバイスの存在しない頃には、宇宙船の行方不明事件は半分くらいがそういう削り取られが原因だったと言われている。
そのヌルデブリを人工的に作る事に成功したのが女王・マナだ。
マナ女王は「ヌルデブリをお前の庭にばら撒くぞ!(意訳)」と銀河辺境の周辺諸国を脅した。
実際破壊力を見せ付ける意味でいくつものヌルデブリ爆弾が使われ、コニッコニコ星系の第3惑星ヴォーカロイドニセ・ンエンクライ・ナラカウノニなどは穴の開いたチーズのようになったと思った直後、崩壊した。
これでは辺境はマナ女王の力にひれ伏してしまうしかない。三丁目の田中さん以外の誰もがそう思った。
しかしそこへ、マナ女王の生き別れの双子の弟・カナ王が現れた。
カナ王はマナ女王の宮殿へと乗り込んだ。
彼は他の惑星から貢物を持ってきた一行のフリをしていた……まあそのへんは省く。
そしてカナ王はマナ女王を毒殺した。茶に毒を入れたのだ。
カナ王は言った。
「マナ、お前は次にこういうだろう……『アベシ!』」
かくして、そのカナ王の言葉と同時にマナ女王は「アベシ」といって倒れたという。
銀河辺境はこうして救われた。
これが「非デブリ女王マナを倒したアベシ茶王カナの物語」である。