「アクア社長」

彼女はごく一般的な水のニンフだった。つまり、呪われたベルが鳴ると召喚され、料理の注文を聞く係だ。アクアは水を運ぶことが好きだった。しかしある日から店にドリンクバーが導入されて、「おひやはドリンクバーコーナーにございます」と客に告げるだけしかできなくなった。アクアはそれでも水を運びたかった。水を出す、笑顔で水を出す、疲れて「帰り着いた」お客様には冷たく冷えた無料のおひやで良い心地になるという料理の前のリセット&リフレッシュをしていただく、そういう無料である意味のあるサービスが重要だと、考えてもいた。ただ単に水を出す行動が好きなだけでもあった。しかし水を出せなくなっ(中略)そしてアクアは社長として「水を出す精神」をその会社の社訓に組み込んだのだ。