「ザ・ゴールドマン」

金を発生させしウィリアム・スミスは「ヰリアム・ザ・ゴールドマン」という別名で呼ばれるようになった。ウィリアム・スミスというのはあまりにもありふれていたからだ。あるとき街に金(きん)が降ってきた。実際には金ではなく黄色い有機物だった。この現象は当初まったく原因不明とされたが、二十五年の調査で山のほうからきているとわかった。さらに五年で山の植物が分解されて黄色有機物になっているとわかった。さらに十年で山の植物の変化は砂漠から巻き上げられて漂ってきた何かによるとわかった。そしてさらに一年で、ついには、「彼」が砂漠に捨てた粗大ゴミや生ゴミが本当の原因だとわかった。彼は賞味期限の切れた缶入り飲料や古雑誌などと一緒に、生ゴミ分解ナノマシン入りゴミ箱などを徹底的にハンマーで壊してから一軒屋の裏の砂の中に遺棄していた。通常ならば、かようなゴミ箱は厳重に法律でさだめられた廃棄法に従わなくてはならなかった。分解ナノマシンはある条件下、とくに長期間砂漠のような環境にあると増殖するという。彼は「発覚」したときすでに死んでいて、砂漠の砂嵐にさらされる彼の小さな家の中で、金のかたまりといった感じのその死体を残していた。
※メモ:この話の面白いところは、冷蔵庫がオゾン層を破壊していたという話にかけてあるところである。