「歌う炎の都市」

ヒュペルボレオス極北神怪譚 (創元推理文庫)

ヒュペルボレオス極北神怪譚 (創元推理文庫)

『歌う炎の都市』がすごい。すごいすごい。
簡単に言うと「飛んで火に入る夏の虫」で、語り手がその「虫」となってしまう話。
そういう話はいくらでもありそうだ。例えば「火」が妖怪が人間の本能の欲求を利用したトラップで、妖怪がそこそこ利口な人間をも捕まえるとか。誰でも考え付く。
しかしこの話では、その「火」が、文字通り 超越的で神々しさ極まりなく、荘厳な音楽を放つ(←ここは引用ではない)「巨大な炎」で、この話を読んだらだれでも、その神聖な炎に飛び込んで命を散らしたくてしかたがなくなる登場人物や知的生命の気持ちがわかる。程度の差はあるだろうけど少なくとも少しはわかる。