ハーフトロル戦士 コンバットコカ

「こいつはまだ見習いだったのだろう‥‥おれと同じように」おれはそうつぶやくと幅の広い剣に付いた血のりと脳漿を舌で舐め取った。おれの目の前には、今叩き殺した若い人間の死体が、そいつの着ていた赤い魔術師のローブにくるまれて転がっている。「そういえば町では今魔術師狩りをしていると聞いたな」おれはその愚かな頭から奇跡的にその事を思い出し、目の前の貧弱な魔術師の残骸から首を切り落とす作業に取り掛かった。「よし、これを持っていけば150ゴールドだ」多いとは言えない報酬だが、貴重な財源だ。この後におれは、安い魔法の巻物数枚とツルハシ1つでそんな額は3時間とかからずに簡単に手に入れられると知るわけだが、この頃にはそういった単純な労働より、スリルある賞金稼ぎの真似事をしてみたかったのだ。
おれは普通の人間ではなかった。母は確かに人間だったが、父は岩トロルだった。母は誘拐ヲ実行され、犯され、おれを生んだ。おれは世間には秘密にされ、5歳のときに母に捨てられ、それ以来街でゴミを漁ったり物乞いをする薄汚い子供達に混じって、その中で育った。16歳のある時、一緒にゴミを漁っていた仲間の1人とゴミの分け前のことでケンカになった。おれは「オンドゥルルラギッタンディスカー!!」と叫んだことしか覚えていない。気が付くとその仲間の1人は首がぶっちゃけありえないくらい捻じ曲がり、血まみれで倒れていた。そしておれの手は血に染まっていた。おれの中の忌むべきトロルの血が暴走したのだ、ということは自分でもすぐに分かった。分かりやすいでしょ?
この殺人事件はあっというまにその街中に広まり、おれは街を出て行くしかなくなった。行くあてなど無かったが、必要になりそうなものはとりあえず強盗してから街を出た。幅広の剣と鎖かたびら、それに食料だ。生まれたときからうでっぷしだけは強いからそんなのは楽勝だ。街を出て数リーグ歩いていくと、超テキトーに街を見つけた。何気に立ち寄った酒場で、『魔法の指輪』を盗んで洞穴に隠れたイークの大王がいるという噂を聞いた。「え?何所だって?」と詳細を訊き、せっかくだからおれはこの辺境の街にやってきたぜ! <つづかない>