エニグマティックデバイス

私が調査を依頼されたそれは、完全に謎の装置としか言いようが無いものだった。いやそもそも装置なのだろうか?
全体が金属で出来ており、抱えるほど大きな50センチ大の箱と、そこから垂直に伸びている先にバレーボール程度の大きさの鉄板の輪があり、その輪の外側の一部に、小さな熊の罠、これはピンポン玉くらいの大きさの、指をはさむのに丁度よさそうな噛みあわせのギザギザ、がついている。そして箱の両脇に短いシートベルトのようなものが二つがあり、パン屋のトングのようなものが1つある。箱は全面にフタがされていて、中身は分からない。
全体的にけっこうな重さがある。ちょっと振ってみると、箱の中に何か粒上のものがたくさん入っているらしく、ガラガラという振動が感じられる。ひっくり返しても変化は無い。なんとなく上に持ち上げてみる。この輪っかが、この装置全体を何かに固定するためのもののように思えた。うーん、頭にはめるのに丁度いいかな。
座って箱を抱えるとちょうど頭の辺りに輪がくる。はめてみた。
輪にヒタイ辺りまでを通したとき、急にズィーという音とともに、輪がしまった。驚いて外そうとするが、がっちりとはまってしまっていて外れない。熊の罠がギョリギョリいいながら輪の上を移動して、私の左目のところで止まった。熊の罠の食いつきは外側を向いている。そして、バシン、と熊の罠が上下のマツゲのところに付けマツゲのように張り付いた。私のまぶたを強制的に開いて固定している。熊の罠の歯は、私の目を抉り出すわけではなく、外側を向いているのが、この驚愕の中で少しほっとしたところだった。
しかし、まぶたが吸い付くように固定されてしまってまばたきができない。これは何か眼科医の使う機械なんだろうか? はずさないとヤバそうだ。しかし外れない。
箱の横のベルトが急に大きく伸び、私の肩を巻きつけた。そして私の両腕の自由を奪い、頭の戒めを外そうとしていた手を箱の横に固定されてしまった。一瞬にだ。
次にトングと箱が動き出した。箱は開かず、トングの先が箱の中にめり込んでいる? 機械に固定された頭と目を無理やり動かすとそんな様子が見えたような気がした。箱にはやはりフタらしいフタは無いようだ。
トングが箱の中に入り、何かをつまんで私の固定された眼球の前まで持ってきた。そして、熊の罠が、私のまぶたをも含めて強制的にガシガシ開いたり閉じたりと動き始めた。トングが異物を私のまぶたと眼球に押し付けてきた。
目を閉じたいという願望は強制的にかなえられたが、目を開きたくないという願望は聞き届けられなかった。
ガシガシと熊の罠に削り取られた異物のかけらが、どんどん眼窩に入り込んでくる。悲鳴を上げながら思った。なんてことだ、これは拷問器具だったのだ。私はよくできた拷問トラップの調査を依頼されてしまったのだ。箱の中にはまだまだ沢山あったなぁ……。
2個目の異物が来た。どうもピーナッツのようだ。