「ユキヤヘイテンセル」

ユキヤヘイテンセルの流した血は「白」と呼ばれている。あるいは「白」がユキヤヘイテンセルの流した血だと信じられている。「白」は白さのみを感じさせる触れることのできない粘液の巨大な塊のようなもので、高尾山の上空から高尾山の全体を覆うように広がりながら落ちてきた。付近はどこを向いても白だけしか見えない状態になった。「白」が降り始めた二日後に、「黒」が御岳山を覆うように降りてきた。白と黒は戦い始め、白が敗北した。黒はカレーうどんの汁がかかってもあまり目立たなかったが、白はうかつなカレーうどんによって致命的な打撃を受けた(これはあくまでたとえだが、だいたいそのような理由により黒が勝った)。白は全部消えて黒だけになった。黒の勝利により世界全部が黒だけになるかと思われたが、黒はあっという間に薄れていき、色あせた黒は溶けるようにあたりにしみこんで消えていった。黒が白をのんだり色あせると灰色だろうと思うかもしれないが、ここではあくまで色あせる黒だったという。その近辺の世界は実は黒だけになっている(ただしとても色あせた)可能性がある。