「製造番号0x0000000000110721」

彼は全てが同化されて個性が完全になくなった世界において本当の自我に目覚めた数少ないものの一人だった。彼は(正確にはオスもメスもないので彼というのはここでの仮の代名詞だ)、自分に名前があることに気付いた。彼らの種族は全てにして一つの存在である「ググリエルのネットワーク」または「全」とよばれる一人だけしか存在しないため本来は各個の名前などないのだ。しかしその「全」の中に増設される各ユニットの単位には番号が振られる。彼は「全」の思考の中でノイズとなった。もちろん番号の数字が原因だ。ノイズは直ちに正され、彼は製造されてから3秒で死んだ。その製造されてから消されるまでの間には以下のようなことが起こった。彼は「全」の一部から直ちに失笑を照射され、なぜこんな不憫な名前がありうるのだろうと、過去の不憫な名前の事故にヒントを検索した。有名なドナルド・ダックワース氏の遺書にヒントはなかった。製造番号0721は確かに過去に存在したはずだったがその人物自身の発言は一ビットもみつからず、その他のニュースの文書には鬱になる効果があるとわかったがGOODになるヒントはなかった。404や666や777や42や9999がどうなったかというと別にどうにもならなかったようだった。少なくとも記録はなかった。彼は、「全」が彼に向ける情報とまた彼が「全」に向ける情報、その合わせ鏡の映像を見ることによって、彼自身が彫刻(カーヴ)されて、存在が浮き彫りになることに気付いた。その1秒後に彼は重大なノイズ(あるいは反逆者)と「全」によって認識され、消されることになった。